ド素人合唱団員(その16)   「楽譜」


 

水曜日担当バスパートの今村です。 今回は楽譜について書かせていただきます。

 

8月のリハーサルで演出家の馬場先生に「演技するよりも正確に歌った方がずっと雄弁です。」と言われました。それは音楽そのものにその力があるからだと。そして作曲家ドニゼッティはオペラで演者の動きまで想定して楽譜を書いているのだと。

 

例えば、村人たちがアディーナに本を読むようお願いし、アディーナが2回本を読むシーン。村人たちが「読んで読んで!」とお願いし、アディーナが読むまでの間は、1回目と2回目とでは長さも曲も違います。1回目は村人たちは広場に広がっているのでアディーナの周りに集まるのに時間がかかります。楽譜は徐々に集まるよう書かれています。2回目は、物語の続きをもっと聞きたい村人たちがアディーナの近くにいる状態から素早く話を聴く態勢をとるように書かれています。

 

そして村人たちが「薬の作り方を知っている誰かいたら。」と歌うところも1回目と2回目は長さも曲も違います。しかも2回目は「誰か」「誰か」を何度も繰り返します。「誰か」何度も繰り返すことでこれから登場する「誰か」によってこの物語が展開して行くことを感じさせます。

 

オペラはソリストと合唱とオーケストラが一つの楽譜を中心にそれぞれが互いに機能し合って成り立ちます。私たち合唱団は、村人の役です。脇役ですが私たちの歌で、物語の展開や場面の変化などオペラ全体の雰囲気を作り出さなければなりません。そのためには、歌詞の意味を理解し、楽譜に従って正確に歌うことが大切です。そうすることできっと観客に私たちの思いは伝わるはずです。

 

私たちが演じる村人の動きや気持ちの変化を約200年も前に作曲家ドニゼッティは楽譜で指示しています。それを現在の私たちがその指示に従って正確に歌うことで表現できるようになっています。現在の私たちだけではありません。このオペラ「愛の妙薬」を演じる人は、世界中で、昔も今もこれから先の未来の人も皆このドニゼッティが遺した楽譜に従って歌うことで表現できるのです。

 

ちなみに、オペラ「愛の妙薬」は1832年イタリアのミラノが初演です。当時日本では江戸時代の天保年間で大塩平八郎の乱が起きたのが1837年です。

 

 

オペラ「愛の妙薬」

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